乳歯は何のためにあるの? - 神様が授けてくれたワンチャンス -

乳歯は何のためにあるのでしょうか。
6歳くらいになると抜けてしまうのなら、初めから永久歯が生えてきてもよさそうなものですよね。

学問的に考えてみると、小児の小さな顎の中に永久歯のような大きな歯が生えてきてしまったら当然のように歯が収まりきれませんよね。そこで、わざわざ乳歯という小さな歯を生えさせて小児でもしっかりと咀嚼ができるようにしているのです。

小児にとっても咀嚼がしっかりできるということは、栄養面や心身の成長発育という視点から考えてみてもとても重要なことであるということは、みなさんもご理解していただけると思うのです。
また、正常な顎の発育や正常な永久歯の歯並びを獲得するためにも乳歯から永久歯に生え変わるという過程が絶対に必要になるのです。逆に言えば乳歯の虫歯を放置しておくと、正常な顎発育や心身の成長発育に支障をきたすようになってしまうということなのです。

そう考えると乳歯というのは極めて大事な役割を担っているんだということがお分かりいただけるかと思うのですが、私はもう一つ乳歯のもつ大切な役割があると感じております。
それは、神様がお母様方に授けてくれたワンチャンスという意味なのです。

私にも子供が二人おりますが、子供が生まれてきてからというもの何もかも初めての経験で、何をしようにも右も左もわからないまま、手探りの状態で子育てを行ってきました。
仕上げ磨きをしなくてはいけないと思いつつも、ついついしてあげられないまま子供が寝てしまったりするようなこともありました。
そんな時には反省し、翌日には一生懸命また仕上げ磨きをしたりするわけです。また、食後には食べたら磨こうねとか、アメやガム、アイスクリーム、チョコレートといった甘い食べ物は極力控えなさいなどと言ってみたり、何とか虫歯になってしまわないように注意を払ってきたつもりでおりました。
しかし、恥ずかしながら数本の虫歯が実際にはできてしまったのです。

この時私は思いました。乳歯は神様が私たちに授けて下さったワンチャンスだったんだって。

右も左もわからないまま手探りの状態で子育てを行ってきたとはいうものの、親としては一生懸命子供の歯が虫歯になってしまわないように努力をしてきたのです。
それでも虫歯になってしまった。これはこれで一生懸命努力した末の結果ですから、親としては真摯に受け入れなければなりません。

しかし、親として子供と一生懸命向き合い努力してきたのですから、今すぐに結果は出ないとしても、お子さんとの関係においてはきっと何か得るものが残ったはずなのです。
いいえ、もしかしたら何も残らなくてもいいのかもしれません。
また、何もかも初めての経験であるなか、一生懸命お子さんのために努力したのですから虫歯になってしまっても仕方がなかったのかもしれません。

人というのは様々な経験を積んで成長していくものですし、同じ失敗を繰り返えさないようにするためにも乳歯で失敗してしまった経験を生かして、今後、永久歯が虫歯にならないようにすることができれば良いのですから。

初心者の両親にとってこの貴重な経験は、どうしたら虫歯にならないようにすることができるのかということを勉強する時期であり、経験を積む場であったのです。
だからこそ、神様は一生使わなければならない永久歯で失敗してしまわないように、将来生え代わることのできる乳歯で十分に勉強しなさいとワンチャンスを与えてくださっていたのです。
そう考えると、せっかく与えてくださったチャンスを無駄にしては神様に申し訳ないと思いませんか。

また、歯科医学的な見地から考えてみても、乳歯のうちはお母様がしっかりと歯磨きを見てあげて、その重要性をお子様にきちんと教えて頂きながら、口腔衛生習慣を確実に作っていかなければならない期間なので、このくらいの年齢からフッ素塗布などに頼って、お母様の関心がお子様のお口から離れてしまうことになれば、せっかくのこの大切な母と子のコミュニケーションも台無しになってしまいます。そのような意味からしてもフッ素塗布などによる虫歯の予防は永久歯が生えてきてからと考えて頂けると良いと思うのです(フッ化物配合歯磨剤についてのc、d、eを参照)