■歯周病と全身疾患
冠状動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)と脳血管性疾患(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症)ですが、平成18年度の死因順位をみてみますと、第1位が悪性新生物(癌)で第2位は心疾患、第3位が脳血管疾患となっております。
主な死因の年次推移をみると、悪性新生物(癌)は、一貫して上昇を続け、昭和56年以降死因順位第1位となり、平成18年の全死亡者に占める割合は30.4%となっており、全死亡者のおよそ3人に1人は悪性新生物で死亡したことになるのです。
心疾患は、昭和60年に脳血管疾患にかわり第2位となり、その後も死亡数・死亡率ともに上昇傾向を示している。平成18年の全死亡者に占める割合は15.9%となっております。
脳血管疾患は、昭和26年に結核にかわって第1位となりましたが、昭和45年をピークに低下しはじめ、56年には悪性新生物にかわり第2位に、更に、60年には心疾患にかわり第3位となりその後も死亡数・死亡率ともに低下を続けており、平成18年度の全死亡者に占める割合は11.8%となっております。
冠状動脈疾患も脳血管性疾患もその原因として、動脈硬化症の存在がありますが、その中でも最も多いのがアテローム性動脈硬化症といわれるものです。この病気は、脂質異常症(従来の高脂血症)や糖尿病、高血圧、喫煙などの危険因子により生じると考えられており、最終的には動脈の血流が遮断されて、酸素や栄養が重要組織に到達できなくなる結果、脳梗塞や心筋梗塞などの原因となってしまうのです。
最近では、歯周病と動脈硬化症の原因と考えられている脂質異常症やメタボリックシンドロームとの関連性に関する研究も盛んに行われておりまが、歯周病になってしまいますと様々な細菌の内毒素や酵素などによる直接的障害作用、炎症性サイトカインによる作用、またこれらの炎症性サイトカインの刺激により肝臓で産生される急性タンパクによる作用、熱ショック蛋白による作用などによりアテローム性動脈硬化症が助長されてしまい、冠状動脈疾患や脳血管性疾患が増加すると考えられているのです。疫学的調査によると、歯周病に罹患することでその危険性はおよそ3倍にも上がるといわれております。