■矯正治療について
まず、歯科矯正という分野は何のためにあるとお考えでしょうか。
みなさんが思い浮かべる矯正治療というものは、歯並びを美しくするための方法、すなわち患者さんの審美面を回復する治療法というのが一般的な回答なのではないでしょうか。
それこそが矯正治療のもっとも大きな役割ですし、矯正治療を行っても歯並びがきれいにならないのであれば、矯正治療を行った意味は何もないといっても過言ではありません。
しかし、みなさん良く考えてみて下さい。歯並びがガチャガチャだと本当に美しくないですか?
一昔前のアイドルといわれる人たちは、皆さん八重歯がありましたし、それがチャーミングポイントなどと言われてもてはやされてもいましたよね。
ところが、その当時のアイドルといわれていた人達が現在どのようになっているのか皆さんご存知でしょうか?
ほぼ全員といってもいいくらい、皆さん八重歯がなくなっています、あの有名な松田聖子さんも現在では八重歯がありません。
すなわち、美しさというものは年齢によっても変わりますし、その時代によっても移り変わりがあるものであり、決して普遍的なものではないということなのです。
そのように考えると、美しさの獲得ということは矯正治療の大きな役割ではあるものの、決して最重要の役割ではないという感じがすると思うのです。
では、いったい矯正治療最重要の役割とは何なのでしょうか?
それは、本人が歯並びを気にすることによって大きく口をあけて人前で笑えないとか、話せないなどの理由により、精神的に内向的になってしまったり、物事に消極的になってしまったりすることがありますが、矯正治療をすることで性格まで非常に明るくなります。
また歯並びがきれいになることで虫歯や歯周病になってしまうリスクが非常に低減されます。歯並びが悪く、歯が重なり合ったりしていると、本人がどんなに一生懸命歯を磨こうと思っても、物理的に不可能であり、将来は必ず虫歯や歯周病になってしまうことは明白です。
そういった観点から考えてみると、矯正治療の最も重要な役割というのは、将来、内向的、消極的になってしまったりしないように、また虫歯や歯周病になってしまったりしないように、そういった将来にわたる様々なリスクを低減するための予防的要素が非常に強いということがお分かりになっていただけると思うのです。
矯正治療を行う場合にはブラケットといわれる装置を歯に接着して歯を動かしますので、装置の周囲に食べかすやプラークが付着してしまい、お口の中が非常に不衛生な状態になりやすく、虫歯や歯周病がとても発生しやすい環境になっております。
せっかく矯正治療をして将来虫歯や歯周病になりにくい環境をつくろうとしているのに、矯正治療中に虫歯や歯周病になってしまったのでは、元も子もありません。
したがって、現在すでに矯正治療をしている方や、これから矯正治療をしようと考えられている方は、せっかく矯正治療を行うわけですから、この期間に虫歯や歯周病をつくってしまわないように、ぜひとも毎日しっかりと歯磨きを行っていただきたいと思います。
みなさん歯磨き頑張ってくださいね。